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Dream Story
- Genealogie de la priere
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「あぁーぁあ…また暫く村暮らしかぁー。…つまんなくなるよ…。」
一面に広がる砂と石の世界。
何処迄も果て無く続く乾いた大地。
照り付ける太陽が作り出す陰影。
他には何も無い。私達を除いては。
ゆらゆらと立ち上る陽炎がこの風景に多少の強弱を付けるが、
それとて取り立てて面白いものではない。
私には到底この砂しか無い世界が楽しいとは思えないのだが、彼にとってはそうでも無いらしい。
定住を知らない私には、訪れる村々の方が遥かに素敵な物に思えてならない。
活気に溢れ、人の沢山居る環境の方が刺激があるのではないだろうか。
確かに国々を廻り、沢山の街や村を訪れる事は嫌いでは無い。
馴染みも多い。皆迎え入れてくれる。
だがしかしそこは私達の家ではないのだ。
小さな簡易テントの中で小さな四肢を投げ出しぶすりとむくれた様に呟いた小さな少年と小さな私の間を何処から紛れ込んだのか小さな虫が這って行く。
「一年なんてあっと言う間だよ。」
「でも待たされる一年は長いものよ。」
「…それはそうだけど。」
彼は手持ち無沙汰に虫の進む先に手を翳し行く手を阻む。
太陽に反射する砂と同じ綺麗な金の髪。
立ち上がった前髪の下には整った愛くるしい目があるのだが…今は不満気に歪んでいる。
彼の手にぶつかった小さな虫はその手を攀じ登ろうとするが途中で落ちてしまう。
何度も。何度も何度も。
その様を暫く眺めて居たが、事態は変わらない。
敷かれた絨毯の上で右往左往するそれを私は見ている事が辛くなる。
「弱い者虐めは良くないわ。」
無言のままぱたりと手を倒し、いよいよ機嫌は悪くなる。
そのまま彼の手を越え、小さな虫は去って行った。
後もう二、三日もすれば彼の産まれた村に辿り着く。
そうなれば彼はこのキャラバンを去らなくてはならない。
彼の言う『村暮らし』を余儀なくされるのだが、私にはそれが少し羨ましい。
そして再び一年後にはまたこのキャラバンに戻ってくる。
もう一人の彼と入れ替えに。
「元気かな。マリクちゃん。」
「…そうじゃないあいつなんてただ気持ち悪いだけだよ。」
それもそうかも知れないと思うと、少しだけ面白い。
私は一年前の彼の事を思い出す。
彼の双子の弟。今は彼の帰るべき村に残っているもう一人のマリク。
彼等は交代で私達と共に旅をする。
元は村の長の子息である彼等は、本来ならばこんな所に居てはならない。
幼少からそれなりの生活を余儀なくされる。
それは次期当主としての知識や教養を身につけたり、重鎮としての人脈作りだったり。
私達の様な子供にとっては退屈以外の何物でもない。
だが、彼等は忌むべき双子として生を受けた。
本来なら後に産まれた赤子はその場で殺すのがこの国の慣例だ。
しかし長い間世継ぎの出来なかった彼等の両親はそれをしなかった。
『出来なかった』と後に聞いた。
仕方無しに弟の方は彼等の村にある避難用の地下街に幽閉され、今私の隣に居るマリクが地上で育てられていた。
弟の存在は厳重に隠され、村の誰しも知る事が無かった。
彼が見付けて仕舞う迄は。
それは偶然の出来事だったのだと思う。
彼曰く、『誰かに呼ばれた気がした。』そうだ。
当然弟の存在が公になり村中が大混乱に陥った。
忌むべき双子は殺してしまえ。
しかしそうなれば村の存続事態も危うい。
村人達の間でも相当揉めたらしい。
そして私達が訪れた。
彼等の村と私達一族は似て非なる者だが縁は深い。
一時的でもこの混乱を治める為に私達の長が提案した。
『一緒にしておく事が出来ないのならば一人を私が預かろう。何も殺す事は無いのではないか。』
兄もそれに強く賛同し、人々は其れに従った。
今にして思えば其れは、誰もが責任を取りたくなかっただけなのかもしれない。
二人の命と村の未来と言う責任を。
あれから四年が経った。
彼らは一年置きに交代で私達の元へ預けられる事になった。
どちらが長になっても良い様にと。
そう提案したのは、今此処に居るマリクなのだが…。
「楽しみを待つ一年は、結構短いかもしれないよ?」
「…。」
「ちゃんと…迎えに来てよ?」
少しだけ上げた顔には先程までの不満では無く、寂しそうな表情だった。
弱弱しい声で、今にも泣き出しそうな声で呟く彼を愛しいと思う。
何も心配などする必要は無い。
私達は此れからもずっとマリク達と一緒だ。
答える代わりに彼の頭を撫でる。
堪えていた物が堰き止められなくて、彼の目から涙が零れ落ちた。
「ねぇマリくん。何時か、私にも、帰るべき場所が出来るのかなぁ?」
「え?」
「ううん。何でも無い。」
テントの入り口に掛けられた布の隙間から差し込む光は何時の間にか色を変える。
橙色の優しい色は細く、長く差し込んでいた。
不意に細く伸びていた光が目一杯に私達に降り注ぐ。
目が慣れない。
誰かが入り口に立っているのだが、逆光が眩しくて誰か解らない。
「。マリク。そろそろ時間だ。直に日が沈む。」
漸く、少しずつ目が慣れて来ると声だけでなく、視覚でも確認出来る様になる。
其処に立っていたのは私にそっくりな少年。
同じ顔。同じ髪型。同じ服。
だけど決定的に違う−肌の色。
照らし出された私の肌は他の者達とは決定的に違う、白い色をしていた。
「何だ。お前達寝てなかったのか。」
「マリくんが帰りたくないって泣くんだもん。」
「なっ!?泣いてなんかないさ!!本当だよ!?リオ!」
つい先程まで弱音を吐いていたとは思えないくらいの勢いで反論される。
本当は泣いてたのに。
きっとマリくんに睨まれるが私は反射的にそっぽを向いて少しだけ舌を出す。
「馬鹿な事ばっかりやってると置いて行かれるぞ?」
何時の間にか外から賑やかな人の声がしている。皆起き出した様だ。
砂漠の移動は基本的に夜間行われる。
昼間の土漠を移動するにはリスクが大き過ぎるからだ。
照り付ける太陽。
それは命の象徴と同時に命をも奪いかねない私達の信仰する神。
夜に活動する私達は昼間に睡眠を摂る。
だがそれももう終わりの様だ。
「なら私は置いて行かれないわ!」
「ちょっ、待ってよ!」
私は勢い良く飛び出し私の兄に抱き付いた。
彼も優しく受け止めてくれる。
一瞬だけ遅れてきたマリクと三人で皆の待つ外へ出た。