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Dream Story
- Les autres me
- 16.【La privation de sommeil】 17.【Tous les jours des gens】 18.【Premiere Duel】 19.【Premiere Victory】 20.【traitant】-Si Ryou- 21.【traitant】-Si Bakura- 22.【Faible fievre】 23.【Surrender】 24.【Explorez】 25.【Rencontres】 26.【Garnet】
- 【Premier transfert】-N゚ 01〜15-
- + remise +
- + aller a TEXTE +
- + aller a principal +
大事な話。
それは勿論、あいつとの約束。
正直、こんな理由で彼女を自宅に招くなんて最低だと思った。
だけど…何処か別の、其れこそ人気の無い裏路地なんかよりはましかと思えた。
『ははぁ。いけないなぁ獏良君。そんな邪な事を考えて。うら若き乙女に一体何をしようと言うんだね。』
その方が、そっちの方が、にからかわれたその言葉の通りの腹積もりだったら、どんなに気が楽だったろうか。
上機嫌で隣を歩くとは対照的に、ボクの足取りは重くなる。
傾き始めている太陽が、更にボクを憂鬱にさせ、悟られぬ様に溜息を吐いた。
「疲れた?」
困った様に笑い掛けて居るを、罪悪感で正面に見据える事が出来ない。
ゆったりとした歩調で歩き続けているボクは、一体何処へ向かおうとしているのだろうか。
もし彼女に何かあったら…その時、ボクは…。
今更だとは思う。だけど、ボクは酷く後悔した。
「運動不足なのよ、了は。歩けない距離じゃないんだし、電車とバスで登校するのやめたら?」
「ボク、朝苦手なんだ。身体が怠くて…。歩いて行ったら遅刻しちゃうよ。」
は目を真ん丸にして驚いた表情を作った。
何か言い掛けているのか、半分開かれた口元が少しだけ間が抜けている。
ボクは…変な事でも言ったのだろうか。
この短い間の会話を振り返るが、何も不審な所は無い。
如何したのか問い返そうとすると、漸く彼女が言葉を発する。
「…了って、朝苦手だったっけ?」
然も意外だと言いた気に、すっかり驚いた彼女は更に問う。
そんなに驚く様な事だろうか?
ボクの寝起きの悪さは、何も今に始まった事ではない。
もう何年も…、…何年も?
そしてふと、ボクは何時からそうなったのか自分でも不思議に思った。
「だって昔は全然そんな事無かったのに…。あ、もしかして夜更かしし過ぎじゃない?ゲームばっかりしてるんでしょう。」
彼女の疑問は、彼女自身の想像により解決してしまった様だ。
謎掛けの問いを返す様に楽し気に話すに、ボクは曖昧な笑みで答えた。
「やっぱりそうだぁー。」と笑うが、何だか遠い所に居る。
それでもボクはずっと夜型だった。
だけどそれは、朝が苦手とか、そう言う訳では無く、ただ単に睡眠時間が短いだけなのであって…。
今も昔も、それは変わっていない筈なのに、アラームで目が覚めると身体が怠く、年々起床するのに時間が掛かる様になっていると気付く。
やだなぁ。何か、年寄り臭い。
ボクは何時からそんな風になってしまったんだろう。
「それにしても…この辺って、良いマンションばっかりなのね…。」
忌々しそうに身を屈め小声で呟いたは、やがて小さな溜め息を漏らす。
皮肉たっぷりに言うのは構わないが…今ボク等の真正面、正に目の前に建つマンションこそ、ボク達の目的地なのだが…。
だけど、彼女の言う事も解る。
この辺は所謂高級住宅地に分類される地域だ。
木々も多く、閑静で過し易い。
「それで?了のお家って?もうちょっと先なの?」
「いや…、あはは…。」
弱々しい笑みと共に力無く前方に聳え立つ真新しいマンションを指差す。
今し方、がじと目で見ていた、その建物を。
何故かボクの方が申し訳無くなってしまう。
折角気を取り直し、明るく話し出したは驚き、何やら表記出来ない様な短い悲鳴と共に固まった。
だけどそれも直ぐに解け、気不味そうに小さな声で「ごめん。」と言った。
「別に謝る様な事じゃないさ。さ、行こう?日が暮れちゃうよ。」
一歩踏み出し、そのまま真っ直ぐエントランスへと進む。
硝子張りの自動ドアが開くと、中から涼やかな空気が流れ出した。
歩き疲れた身体に心地良い。
だけど些か強すぎるその空調は、長く此処に居ては身体に悪いとも思わせる。
エントランスにはソファ等も置かれているが…其処に人の姿を見る事は殆ど無かった。
パンツのポケットに手を入れ、皮製のキーケースを取り出そうと鍵を探す。
其の間物珍しそうに辺りを見渡して居たは、オートロックの操作盤の前まで来るとぱっと明るい顔になる。
「そんなに面白い?」
「これ、ラピュタみたいねっ。」
…ラピュタ…?あぁ、あの映画のやつか。
一瞬何の事か解らずに反応し遅れる。
一体何を言い出すのかと思えば…。
呆れにも近い心持でを見て居たが、彼女は相変わらず、楽しそうに其れを見ていた。
「なら、此処に書いてある字が読めた人は死亡フラグだね。」
「…!!」
其れ迄と一変し、何故かショックを受けたらしいは、蒼白な顔で此方を振り返る。
本当に、ころころと表情が変わって忙しい。
そんな彼女を可愛いと思いつつ、操作盤に鍵を差し込みオートロックを解除する。
如何やらオートロックマンションへ立ち入るのは初めてなのであろうは、開いた自動ドアにすらびくりと反応する。
操作盤と自動ドアとを見比べ、何やら感心した様に一言、「ほう。」と言った。
「行くよ?こんな所でもたもたしてたら怒られちゃう。」
「…誰に?」
「大佐にさ。」
「なるほど。」と笑う彼女は軽い足取りでボクに続き奥へと進んだ。
このマンションの六階にボクの部屋はある。
角部屋の、601号室。
真新しい白い壁。傷の無い床。必要最低限の家具。
窓が多く、日当たりの良い其の部屋はそれなりに気に入っていた。
独りで暮らすには、少し広過ぎるけれど…。
エレベーターに乗っている間も、始終にこにこと上機嫌のに、愈々ボクも腹を決めないといけないと思う。
もう此処迄来てしまったんだ。
言い訳は…出来ない。
何が起こってもボクの責任だ。
だって、ボクは、…彼の共犯者だから。
高く軽い到着を告げる音。
エレベーターの扉が開くのと同時に、はぽん、と跳ねる様にして降りた。
続くボクの足は、それでも矢張り重い。
廊下の突き当たり。其処に辿り着いてしまったら…もう…。
そんなボクの思いなんか何処吹く風の様には小走りで先を行き、一番奥迄進んだ所でぴたりと止まる。
表札を見上げ、ボクの到着を待っている。
此の侭、辿り着かなければ良いのに。
けれど、現実は無常にもやって来る。
ボクが逃避するには、この廊下は短すぎた。
鍵を手にしたままのボクが扉を開けるのを、今か今かと待っているが心に重く圧し掛かる。
言わなくては。ボクは、この扉を開ける前に、ボクは、かの、じょにい わなけ、れ ば………−
そしてボクは、深い暗闇の中へと堕ちて行った。
「お待たせ。さぁどうぞ。入って。」
「うわぁーい!お邪魔しまーす!!」
はしゃぐ女の後に自分も続く。
まだ日の落ち切らない室内は変に明るかった。
さぁて…これから如何したもんか。
だが、此処ならば、そう簡単には逃げられねぇ。
宿主は良くやってくれたと思うのと同時に、微かな苛立ち。
あの時オレ様と入れ替わるのがもう一瞬でも遅かったのなら…。
めんどくせぇ事はごめんだと言っただろうが。
心の中で舌打ちをすると、部屋の奥から感嘆の声が上がっていた。
一体何事かと後を追うと、窓に張り付いた女が外を眺めて居た。
オレに気が付くとそのままで、何が面白いのか「良い眺めね。遠くまで見渡せる。」と食い入る様に見ている。
「バルコニーに出てみたら?ちょっと風が強いかもしれないけど。」
「えぇ!良いの?」
そして、振り返った女の笑みが、すぅっと消えた。
あの時と同じ様に、無重力の中振り返った服の裾だけがいやにゆっくりと翻る。
静止した女に其の裾だけが現実を示す様に揺れ、やがてそれも止まる。
無機質なこの部屋の中で、女だけが鮮やかだ。
そうして、世界は静寂に包まれた。
一体、何だ。
大きな二つの瞳に魅入られ、身動き出来ない。
鮮やかな色彩、止まった室内、沈黙する時間、静止した−オレ。
咽喉に異様な乾きを覚える。
漸くの思いで如何かしたのかと問おうとした其の前に、女が口を開いた。
「あなた、だれ?」
全身に冷水を浴びせられた様な、嫌な感覚が身体を包む。
何故ばれた。何故解った。
たった、たったの、この、五分足らずと言う短い時間で。
何故、『オレ』だと言う事が解った。
いや、きっとこれは今オレが思っている様な意味では無い。
どうせまた宿主とこの女の意味不明な遣り取りの一環なのだ。
じゃなければ、そうでなければ、如何説明が付くってんだ!!
「えぇ?何の事?」
何時もの様に、完璧に宿主を演じてみせる。
困惑し、すっ呆けた声で逆に問い返す。
其の間にもう一度この短時間の事を反芻する。
…やはり、襤褸なんざ、出しちゃいねぇ。
だが…目の前に対峙する女は、困った様な笑みを作り、無言のまま。
逃げるでも、騒ぐでもなく。
これは…一体…如何言う意味だ。
「…んー………………。でも、これ以外の言い方って思い付かないし…、えぇっと…、…?」
何か必死に考え込みながら、女は自分の顔に指先をあてがう。
現状が、さっぱり解らねぇ。
他の言い方だぁ?何の事だってんだ。
すると、何かを諦めた様に、もう一度、先程よりも弱々しく話し出す。
「君…了じゃ…ない、よね?」
オレに落ち度は無かった。
オレは、完璧だった。
だが今はそんな過ぎ去った事を考えてたってしょうがねぇ。
目の前の事実は、一つ。
オレ様の完璧な演技は、こいつには通じなかったと言う事だ。
だが…それが如何した。
今更遅いぜ。
「だったら…如何だってんだ?」
抑えていた力を解放する。
逆立つ髪。浮き上がる千年輪。
腕を組み、低い声で問う。
今この身体は、完全にオレ様の支配下に置かれた。
其の様を、女はただ、見ていた。
やはり、逃げるでも、騒ぐでもなく。
その視線には嫌悪も驚愕も含まれて居らず…ただ、呆けて見ている様にしか見えない。
次の出方を講じるでも、身構えるでも無く、ただ、其処に立っていた。
…何だ?
「わぁぁあっ!!!」
漸く反応を示した女は大声で仰け反る。
驚くにしても、タイミングを外し過ぎている。
…本当…何だってんだ。こいつ。
まるで宿主を見ている様で…頭に鈍い痛みが走る。
訳解んねぇ…。
「立った!毛が立った!!」
指差しながら血の気の引いた顔で叫ぶ。
驚くのは…其処か?
軽い脱力。
付いてけねぇ。
「テメェ…他に言う事ぁ無ぇのかよ。」
「あ、…と。えぇっと…ごめん、何か吃驚して…はは。あぁー………じゃあ、もう一回聞いても良い?君は誰?」
おろおろとしていた女はやがて佇まいを正し、先程と同じ事を問う。
無表情かと思えば驚いたり、苦笑したり、かと思えば…屈託無く笑ったり。
忙しねぇ奴。
だが此処でこんな奴のペースに飲み込まれる訳にはいかねぇ。
「バクラだ。」
「そっか。初めまして、バクラ君。」
威圧的に言い放ったオレに、女は穏やかな笑みを湛えたままだった。
何だか釈然としねぇ。
こいつ、唯の馬鹿か?
不意に訪れた沈黙。
女もそれを感じている様で、所在無く、次の言葉を次げずに居た。
空気が読めない訳ではないらしい。
「あぁー…えぇ…と。私は。。宜しくね。」
それでも何とかめげずに自分の名を告げる。
しかし、オレが何の反応も見せずに押し黙っていると、其の内気拙そうに苦笑した。
「えっと…。何か、用、かな?了は如何したの?」
「テメェ…一体何者だ。」
「へっ!?」
めんどくせぇ…。
だらだらと話して居ても埒が明かねぇ。
だから単刀直入にそう問う。
しかし、奴にその真意は、届かなかった様だ。
「わ、私?私は了の幼馴染で…、あれ!?今言わなかった?って言うんだけど、」
「んな事ぁ如何でも良いんだよ!!」
威嚇する様に出した声が、自分でも思っていたものよりも大きく、相当に苛立って居るのだと再確認する。
疎い屑だと心底厭になる。
素っ頓狂な声で慌てふためいていた女はオレの声に一蹴され、びくりと身体を強張らせると再び沈黙した。
黙っていられたんじゃあ進まねぇ。
だが押し黙られてても困る。
「良いか。良く聞けよ。テメェ、千年アイテムの所持者なのか?」
「え…、え?何?千年…アイテム?」
血の気の引いた、強張った顔で切れ切れに繰り返す。
…アタリか?
「千年アイテムって…何?」
「これだ。」
恐々と問い返してくる。
これで良い。これで漸くオレ様のペースになった。
首にぶら下がる千年輪を掴み軽く揺らして見せると、全身を強張らせ、オレの一挙一動に全神経を集中させていたのであろう女は、僅か後退した。
それが、ただ千年輪を掲げただけだと確認すると、食い入る様にそれを見詰める。
静かに光を湛えた其れは、何の反応も示さない。
女は暫く眺めて居たが、やがて視線を上げ、オレを見据える。
「これ…知ってる。思い出した。了のお父様が、彼にくれた物でしょう?」
「そうだ。」
「私は…そんなの持ってないよ。」
今までの怯えて居た様からは一変し、ただ一言そう言った後、悲しそうに微笑んだ。
…所持者では無いのか。
しかし…。
千年輪に目を遣り思案する。
この女がやって来た時、確かにこの千年輪が反応した。
それは、事実。
「ねぇ。千年アイテムって何?それと、了と、君と、如何関係があるの?」
「…ん?」
所持者では無いのならば、こんな奴にもう用は無い。
だが、本人が其れを自覚せずに持ち歩いているのならば、説明してやるより他に無い。
本当にめんどくせぇ奴だ。
さて…如何したものかと軽く思案していると、オレの斜め上辺りに視線を上げた女が短く呟く。
「…あっ。武藤君。」
「遊戯が如何した。」
「武藤君も、千年パズルって、首に掛けてたネックレス…そう言ってた。千年アイテムって…色んな形があるの?」
愈々説明してやらねぇと駄目な様だ。
まさか、オレ様の持つ千年輪と同じ物を持っていると、そう言う意味で考えていたんじゃあ…ねぇよな?
苛立ちと脱力を繰り返し、如何にかなってしまいそうだ。
「千年アイテムってのは、この世に七つある過去の遺物、アーティファクト。勿論、其々が異なる形をしている。」
「…アーティ、ファクト…?其れと君と、如何関係があるの?」
「オレ様は、この千年輪に封印された、3000年前の魂の欠片なのさ。」
「たま、しいの…か、けら・・・?」
オレの言葉を鸚鵡の様に繰り返した女の顔は真っ青で、焦点が合わず微かに震え出す。
それはオレが今まで見た中で、一番悲愴なものだった。
か細い腕で自分の身体を抱き、やがてがたがたと痙攣する様に震える。
明らかに様子のおかしい女を目の前に、オレにも微かな動揺。
こいつ…一体如何したってんだ?
これは、こいつが今抱えている物は…一体何だ。
恐怖、それとも…−。
何時の間にか沈み掛けた黄昏の光に照らされ俯いた女が如何言う心情なのか、オレには想像も出来ない。
闇に飲まれ、今にも壊れてしまいそうだった。
声を掛け様とした、その刹那。
辺りの空気が、一瞬にして張り詰める。
異変を感じ、身構える。
周囲を探る様に投げた視線をもう一度女に戻すと、其処には知らない女が立っていた。
「今一度問う。貴方は、誰。」
今までのだらしねぇ女とは似ても似つかない、低く、威圧的な声。
小さく震えて居たか弱い少女は、もう何処にも居ない。
対面するのは、背筋を伸ばし顔を上げ、此方を真っ直ぐに見据える、と言う名の、ただの器だった身体。
逆光に照らされ、闇の中に居る筈の女の目だけが異様な雰囲気で浮かび上がり、その片目だけが鮮血の様に赤かった。
「ハッハハハハハハ!!やっとお出ましって訳かぁ!!?」
やはりオレ様の感は正しかったって訳だ!
こいつもオレと同じ、封印された魂なのだとしたら…と言う女は、確実に千年アイテムの所持者。
ゾクゾクする。漸く面白くなってきやがったぜ。
やはりオレの思っていた通り!!
さぁて…これから、如何してやろうかねぇ…?
「オレ様はバクラ様だ!」
「そんな事を聞いているんじゃない。」
「…なん、だとぉ…?」
ふと、先程迄の会話がリフレインする。
不快を通り越し、頭に血が上っていくのが自分でも良く判る。
これでは…立場がまるで入れ替わっているじゃねぇか。
…ならば他に…真意があるとでも言うのか…?
「…ふん。大方、そいつん中で聞いてたんだろう?」
「そうね。なら質問を変えるわ。3000年前の…魂の欠片って、一体何の事?」
こいつ…遊戯と同じで、知らねぇのか。
しかしそれはそれで、都合が良い。
案外、余計な浅知恵の無い方が…動かし易い。
「オレと遊戯って奴の中に居るもう一人の人格は、其々千年アイテムに封印された3000年前の魂。其処までは良いな?」
「ええ。」
「しかし…何故こんな事になっているのかはオレ様も知らねぇ。だが、千年アイテムを全て集めた者は…この世の全てを我が物に出来るってぇ話だ。」
「…。」
「なら…集めてやろうじゃねぇかってぇのが、オレ様の性分なんでな。」
「…そう。」
そう言って女は、何処か寂し気に目を伏せた。
先程の威勢は何処へ行ったんだ。
だが、そんな考えは、直ぐに不要だったと思い知る。
再び此方に向けられた瞳には、警戒と敵意の色が、一層濃く宿っていた。
「でも残念だったわね。私はそんな物、持ってないわ。」
「…何、だとぉ…?」
徐に緩慢な動きで両腕を広げ、女は其の侭静止した。
薄い長袖のブラウス一枚に、着丈の短いスカート。
他には何も、身に着けては居ない。
この状態で隠し持てるのは千年眼くらいだろうが…其れは今、オレの管理下にある。
千年輪も、何も反応を示さない。
ならば…本当に違うのか。
「チッ…その様だな。なら…テメェの存在は如何説明する。」
「貴方には関係の無い事だわ。」
無表情のまま、ぴしゃりと言い切られる。
その声はやけに鮮明で、迂闊にもオレは、咄嗟に言葉を返す事が出来ない。
この状況にも、何よりも、そんなだらしねぇ自分自身に苛立つ。
「あぁそうかい!ならそれも良い。だがな、オレ様の邪魔だけはすんじゃねぇぜ?」
「それは如何かしらね。貴方には貴方の都合がある様に、私にも私の都合があるわ。邪魔されたくないのならば、私に関わらないで。」
「はっ!そんなのはこっちから願い下げだぜ。」
一々癇に障る。
だが此方が手出ししなければ…。ならば、今は排除すべき存在では無い。
今は、な。
結局収穫はゼロ。唯の骨折り損だ。
全く…胸糞悪い。
こいつが千年アイテムの所持者で無いのならば、オレ様が今表に出ている必要は無い。
「…、待って!」
怒りと疲労感を引きずったまま心の奥に戻ろうと思った時、意外にも呼び止められた。
その声が今までとはあまりにも違い、切迫し懇願する様で、思わず動きが止まる。
呼び止めた当の本人は、暫し逡巡し、やがて小さな声で「ごめん、何でもない。」と消え入る様に言った。
その声が、先程の態度からは想像出来ない程に弱かったので何事かと思ったが…
それ以上何も言う気配が無いと解ると、漸くオレはその場から消える事が出来た。
心の奥底から宿主を引っ張り出し、無理矢理表に出す。
…全く。面倒事はごめんだと、あれだけ言っていたのに。
それでも、重い疲労感を引きずったまま、もう少しこの場を監視する事にした。