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Dream Story
- Les autres me
- 16.【La privation de sommeil】 17.【Tous les jours des gens】 18.【Premiere Duel】 19.【Premiere Victory】 20.【traitant】-Si Ryou- 21.【traitant】-Si Bakura- 22.【Faible fievre】 23.【Surrender】 24.【Explorez】 25.【Rencontres】 26.【Garnet】
- 【Premier transfert】-N゚ 01〜15-
- + remise +
- + aller a TEXTE +
- + aller a principal +
ショーウインドウに駆け寄り中の様子を伺う。
お店は洋菓子店。中にはショウケースの奥のイートイン。
落ち着いた雰囲気の煉瓦作りのその店はまさに私が探していた理想としていたものだった。
一足遅れて了が追い付く。
大した距離でもないのに息を切らせぐったりとして。
色白な彼からは何の疑問も無く想像出来る。
きっと…運動不足なんだろうなぁ。
「いきなり…走らないでよ…!」
「あはは。ごめんごめん。さっ!入ろうよ!中はきっと涼しいよ?」
困った顔で笑顔を作ってくれる彼をドアを引き中へ促す。
中から冷やされた空気が溢れ私達を包む。
汗ばんだ身体にそれはとても心地良い。
中は外観と同じく落ち着いた煉瓦作りを基調としたアースカラーで纏められていた。
カウンターになったショウケース。その横手には喫茶スペース。
奥を窺うとウェイターさんが奥へ案内してくれた。
席に着き息つく間も無く私は席を立つ。
「如何したの?」
「ふふっ。ちょっと待ってて?」
私はいそいそと元来た道を戻る。
そして入り口のショウケースから、ある物を探す。
−…あった。
それは、彼の好みが変わっていなければ…−
「あの、すみません。」
テーブルに戻ろうと喫茶スペースのテーブルの間を縫う様に歩いていると
退屈そうに頬杖をついた了がメニューのページを捲っていた。
戻った私に気が付くと軽く片手を振る。
「ごめんね!お待たせ。」
「一体何処に行ってたの?」
「んふふ。内緒。」
「えぇ…なぁに?変な笑い方して…。」
途端に怪訝な顔になる。
へ、変な笑いとは失礼な。
何時だってサプライズと言うのはわくわくするもので。
自然と浮かび出る笑みを噛み殺すのはそれなりに大変なのだ。
「別に?何でもないよ。」
「ふぅーん…?」
怪訝なまま此方にメニューを手渡してくれる。
私はそれを受け取り適当に捲る。
その行為に、もう意味は無いのだけれど。
そして不意に浮上する疑問。
了は何故あんな事を言ったのだろうか。
「ねぇ了。さっき武藤君達の方が童実野町に詳しいって言ってたけど…如何して?」
「え?」
「そりゃあ武藤君は童実野町に住んでるんだもの。詳しいのは当たり前じゃない?でも了だってそうでしょう?」
「あぁ…。ボクは隣駅に住んでるからね。皆とは反対の方向なんだ。遊戯君達より詳しくないってのは、本心だよ。」
そうだったのか…。
昨日お邪魔した武藤君の家はその風景に馴染み、長い年数其処にある事を容易に想像させた。
童実野高校は公立だし、きっとみな近所に住んでいるのであろう。
了は…中学までは私と同じ学校だった。
それもやはり童実野町と言う括りの中には入るが…此処からは少し離れる。
どちらかと言えば海馬邸の付近。
隣駅…学区の事を考えれば、それは正しく海馬邸方面の事だ。
私は数年其処から…いや、童実野町からも離れていたが…彼は如何して居たのだろう。
彼が実家に居ない事は知っていた。
施設を移る最後の日まで、それはずっと気にしていた事だったから。
メニューと共に出されたグラスの氷が溶け、からんと涼しげな音をたてた。
「…了は、」
「そんな悲しそうな顔しないでよ。これでもボク、今の生活、結構気に入ってるんだ。」
そんな顔…していたのだろうか。私は。
何だろう。この気持ちは。
童実野町から離れていた数年、私は辛い思いばかりした。
だけどそれは、私だ。彼じゃない。
勝手に自分に重ね合わせて、一体私は何をしているのだろう。
−同情。
誰に?
…自分に、か。
嫌な女。
「は、」
了の呼び掛けにはっとなり、現実に戻る。
何時の間にか俯いていた私は反射的に了の方へと顔を上げた。
其処には何時もと同じ微笑で私を優しく見詰めている、了が居た。
視線が絡む。
すると了は、言い掛けていた何かを飲み込んだ。
如何したのだろう。
了の言葉を待つ私に、彼はきょとんとした表情で唐突に言う。
「…変な顔。」
「…、へ?」
「やだなぁそんなに怖い顔して。まるでボクが虐めてるみたいじゃないかぁ。」
「なぁ!?ちょ、ちょっと!了!?」
唐突に軽く吹き出した了は、あっけらかんとした調子で途轍も無く失礼な事を言い出した。
怖い顔!?
私そんな顔…して…た、のかも…知れない。
少し困った様に眉根を落とし、小首を傾げた了が続ける。
「何時もみたいに、笑っててよ。」
…くっそー…。何だ。何でだ。
今ちょっとだけ、本当にちょっとだけ格好良いなこいつとか思ったのは…、
絶対に本人には言ってやらないと心に固く決意する。
そんな、如何仕様も無くなっている私に救いの手が伸べられる。
「お待たせ致しました。」
「え?…まだ頼んで…」
「ふっふっふ…これで良いのだよ、獏良君。」
了のキラキラ攻撃に撃沈していた私は、ウェイターさんの登場により華麗な復活を果たす。
テーブルの上に慣れた手付きで並べられる二客のティーセット。
それをただぽかんと眺めている了は銀盆から下ろされる食器達を眺め、視線を上へ下へと動かしている。
配膳が終わり静かに下がるウェイターさんのその様子を見詰めていた了は頭の上に疑問符を浮かべたまま
ウェイターさんが厨房へ消えるまでその後姿を見送っていた。
んふふ…現状が把握出来ないって感じね。良し良し。
「えぇ…これって…?」
卓上に戻された彼の視線。
驚きを含んだ声で呟いた彼の頭上に浮かんでいた疑問符は感嘆符へ変わる。
私の前に置かれた一枚のケーキ皿。その上にはキルシュトルテ。
それは同じ様に彼の前にも静かに置かれている。
だけど決定的に違う。それは、
「ちょっと遅いけど…お誕生日、おめでとう。了。」
キルシュトルテの隣には小振りのシュークリームと、
双方の間に置かれたマジパンのプレート。
其処には几帳面な筆記体で"Happy Birthday"の文字。
「覚えて…いたの?」
「勿論!…と言っても、もう一ヶ月近く過ぎちゃってるけどね…ははっ。」
そう。もう九月も終わろうというこの時期に、少し迷いはしたが…
私は彼に、細やかなお祝いをしたかった。
「こんな事くらいしか、出来ないけど。」
「嬉しいな…。」
噛み締める様にゆっくりと呟いた彼は、とても穏やかな笑みを浮かべていた。
あ…あれ?おかしいな。
今度は了が嬉しさのあまり机に突っ伏す番ではないのか。
何故今一度私がキラキラ攻撃を受けている?
何故鼓動が早くなる?
「ありがとう。。」
私を真っ直ぐに見詰めて、彼が微笑んだ。
何故だぁ!!何故私がもう一度机に突っ伏している!?
「…??」
「な…何でも無い、なんでも…ふふっ。」
漸くの思いで二度目の復活を試み上体を伸ばそうとした時、
私の身体から軋む音が聞こえたのはきっと幻聴ではないと思う。
傍から見ればかなり滑稽なのだろうが…こんなに喜んでもらえたのなら、
…それも仕方あるまい。
「頂きましょう?お茶が冷めちゃう。」
「うんっ!」
無邪気にフォークを手にする彼に、私は心の中で降参した。