Dream Story
Les autres me
16.【La privation de sommeil】 17.【Tous les jours des gens】 18.【Premiere Duel】 19.【Premiere Victory】 20.【traitant】-Si Ryou- 21.【traitant】-Si Bakura- 22.【Faible fievre】 23.【Surrender】 24.【Explorez】 25.【Rencontres】 26.【Garnet】

【Premier transfert】-N゚ 01〜15-
+ remise +
+ aller a TEXTE +
+ aller a principal +


「テメェは何もしなくて良い。」
「…はぁ?」

 つい、つい今し方、取り引きをしようと言って来た。
彼の要求はが千年アイテムの所持者か否かの確認。
その為にボクに何かさせるつもりなのでは…なかったのか?

「つまり。テメェは何時も通りに振舞っていりゃあそれで良いって訳だ。簡単だろ?」
「それは…、」
「出来るのかぁ?千年アイテムの所持者かも知れないと、知った今。」

 心配しているのではない。
これは…馬鹿にされているのか。
にやついた彼の顔が神経に障る。

「馬鹿にしないでよ。それくらい、ボクにだって解ってる。出来るさ。」
「そうかい!なら確りやってくれよぉ?」

 彼の意図がさっぱり理解出来ない。
だから何だと言うのだ。
軽く睨み付ける様に見詰めると、にやついた顔のまま彼は言う。

「オレ様があの女に問い質してやる。テメェは、それを邪魔されない様な場所に連れて来てくれればそれで良い。」
「…。」

 それは…そうなれば…何かあってもに助けの手は、無い、と言う事か。

「…ふん。それは違うぜ?宿主サマよ。オレ様が手を下さなければならない様な事になれば…奴のもう一つの人格だって黙っちゃないだろうぜ。」

 またか。
思考を読まれ、薄ら寒い気持ちになる。
やな感じ。

「だから、そうならない様にやってくれって言ってるんじゃないか。」
「オレ様だってそうしたいさぁ!…厄介事はごめんだぜ。」

 言い出した彼は何時もの軽い調子だったけど…最後は、至極真面目な顔付きで言い捨てた。
…信用して…良いのだろうか?

「…忘れないでね。何かあったら…その時は−」
「チッ…あんなこっ恥ずかしい事…みすみすさせるかってんだ。」

 一応…大丈夫、みたい。
正直に言えば…かなり抵抗はある。
でも…ボクは…の事を、もっと知りたい。

「ん。時間みたいだぜ?」
「え…?」

 ボクと彼だけの空間。
薄闇は消え掛かり、ボクの意識は浮上する様に浮かんでいく。

「じゃあな。頼んだぜ?宿主サマ。」

 遠く、小さくなって行く彼を見ながらボクは現実へと戻っていった。



「…。」

 目が覚めると、調度授業が終わったところだった。
鳴り響くチャイムの音を、何処か遠い世界の様に感じた。

「…了?大丈夫?気持ち悪い?」

 最後に会った時と同じ位置から、が不安気な表情でボクを見下ろしていた。
そうだ。。千年アイテムの…所持者候補。
そんな風には…見えないんだけど…。

「ああ、大丈夫。ちょっと変な夢を見て…。」
「…。へぇ、了でも居眠りするのね。」
「意外?」

 きょとんとした顔で言った彼女はボクの言葉に笑顔で頷いた。
ふと彼女の手元を見ると、確りと鞄が握られている。
もう帰る気でいるのだろうか。まだホームルームがあると言うのに。
そこで何かおかしい事に気が付く。
周りを見回してみると既に席を立つ人も多く、ボクはそこで初めてホームルームまで終了していた事に気が付いた。

「よぉ獏良!しっかしまぁ、良ぉく寝てたなぁ!!」
「本田君。」
「おめぇがこんなに眠り扱けるなんて、珍しいじゃねーか。」
「やっぱりそうなんだ。」

 噛み殺す様にが笑う。
今登場したばかりの本田君と、先程からずっと居る筈のボクは何故彼女が笑うのか解らない。

「だって了、昔っからずっと真面目に授業受けてて、居眠りしてる所なんて見た事無いもの。」
「へぇ。偉いんだなぁ獏良。」
「えぇ…それが普通じゃないの?本田君はちょっと寝過ぎなんじゃないかなぁ?」

 「な、なんだとぉ!?」と本田君が軽く声を荒げるとは更に面白そうに笑い出した。
一頻り笑ったところでが切り出す。

「それじゃあ本田君、また明日。行こう?了。」
「なんだぁ?用事って獏良とだったのか?」
「うんっ。」
「かーっ!なんだよ、デートかぁ?」
「はっはっはー。どうだ。羨ましいか!」
「な、なにぃ!?マジなのか!?」

 帰り支度をしながら本田君との遣り取りを何気無く聞いて居たボクは、
鞄に入れようとしていた教材を思わずばらばらと落としてしまう。
落ち着け、ボク。これは…冗談だ。解ってる。

「ちょ、ちょっと了!大丈夫?」
「まぁーだ寝惚けてんのかぁ?」
「あ、あぁ、ごめん。ちょっと突っ掛かっちゃって…。」

 と本田君も一緒に拾い集めてくれる。
今度こそ全てを確りと仕舞い込む。

「しっかりしろよぉ?獏良。」
「ねぇ…本当に具合悪いんじゃないの…?」

 彼女の白い手が、ボクの顔に伸びてくる。
彼女の細い指が、ボクの額に触れる。
鼓動だけが独りでに暴走し、身体は石化したみたいに動けなくなった。

「…ほら。やっぱりちょっと熱いみたい…。」
「えぇ。大丈夫なのかぁ?」
「な、なんでもないよ!!じゃあね本田君!また明日!!」
「あっ!?ちょっと、了!?ま、また明日ね本田君!ちょ、引っ張ったら危ないよ了!!」

 勢い良く立ち上がり、の持つショルダーのバッグの肩紐を引っ張り教室から連れ出した。
遠く後ろの方で「お大事になぁ〜!」と本田君の声が聞こえるけど、
ボクは足早にその場を離れる事しか考えられなかった。
は「ちょ、ちょ!」とか「あ、危ない、危ない!」と繰り返しているが足を止めずに後をついてきてくれた。
昇降口まで一気に移動する。其処まで来て漸くボクは足を止める事が出来た。

「い、いきなり如何したの了…びっくりしたぁ…。」
「あっ、いや…ごめん。」
「あっはは。走ったら熱っついね。」

 季節外れの長袖のブラウスのカフス釦を外し掌で顔を仰ぐは少しだけ上気していた。
二学期が始まって一ヶ月弱。
空はまだ夏の色をしていた。

「行こう?」

 明るい声で言う彼女に、ボクも笑いながら頷いた。
彼女には抜ける様な青空が良く似合うと思った。



 校門を抜け、童実野駅の方へ向かう。
結局…もう一人のボクとの時間に全てを取られ、この後如何するかボクは全く考えていなかった。
歩いている間取り留めも無い事を話し続ける。
それは、先程の城之内君とのデュエルの事だったり、
昔まだ一緒の学校に通って居た時の話しだったり、
嫌いな先生の話とか、明日の事とか、
そんな、如何でも良い事。
そしてボクは漸く質問を切り出す勇気を出す。

「…ねぇ。」
「ん?」
「何でボクと一緒に行こうって思ったの?多分…ボクよりも遊戯君達の方が、童実野町は詳しいと思うけど…。」
「何で…って…?」

 そう言うと彼女は立ち止まり唸り始める。
腕を組み眉間に皺を寄せ、何か考え込み始める。
ボクはそれを見守る事しか出来ない。
言ってしまった。もう取り消す事は出来ない。
時間は元に戻りはしない。
彼女の返答を聞きたい。だけどそれは…凄く怖い。
今更ボクは後悔した。
暫く唸って居た彼女は突如ぱっと顔を上げ、ボクに向き直る。

「…解んない。」
「解んないって…。」
「何かね。了と一緒だったら楽しいかなぁって、思ったんだ。」

 これは…如何受け止めるべきなのだろう。
思考停止寸前のボクに微笑み掛ける彼女に…他意は無いのだろう。
ならば言葉の意味のまま、受け止める事にしよう。
『ボクと一緒なら楽しい。』と。そのままに。

「あ。」
「え?」

 唐突に小さく短い声を出した彼女は道の先を指差し此方を見遣る。
指の先には一件の洋菓子店。

「喉渇かない?」
「…、そうだね。」

 何事かと思えば…。
再び歩み出した足は、また直ぐに止まる事となった。

「え、何でそんな仕方無いなぁ〜みたいな顔するの!?」
「そ、そんな事思って無いよぉ!」
「…如何だかなぁ〜…。良いよ!了は置いてく!!」
「えぇー!?ちょ、ちょっと待ってよぉ!!」

 小走りで駆けて行く彼女をボクはやはり、仕方無いなと思いながら追い掛けた。