-
Dream Story
- Les autres me
- 16.【La privation de sommeil】 17.【Tous les jours des gens】 18.【Premiere Duel】 19.【Premiere Victory】 20.【traitant】-Si Ryou- 21.【traitant】-Si Bakura- 22.【Faible fievre】 23.【Surrender】 24.【Explorez】 25.【Rencontres】 26.【Garnet】
- 【Premier transfert】-N゚ 01〜15-
- ⇒+ remise +
- ⇒+ aller a TEXTE +
- ⇒+ aller a principal +
…眠い。怠い。しんどい。
当たり前だ。
昨日私が寝たのは既に空が白んでからだった。
布団が恋しい…。
今ならベットと結婚しても良い。
それくらい眠いのだ。
送り迎えしてくれた車の中で少し寝たのが、それは逆効果だった。
何故寝たのに余計眠くなるのだ。
まさに神秘。
一緒に起きて居た筈の瀬人は先に降りる私が起きる迄眠りに落ちる前と変わらず書類に目を通していた。
瀬人は眠気を知らないのだろうか。
…まさに神秘。
ナルコレプシー宛らの私を残して瀬人とモクバは"出勤"してしまう。
あ…いってらっしゃいって言うの…忘れたな。
まぁ良いや。それは帰って来た時にでも言えば良い。うん。眠い。そうしよう。
教室での私の席は廊下寄り、やや後ろ。
今頭の中は如何して教師の目を盗み睡眠を取るかで一杯だった。
教室に入るとクラスに人は半分くらい。
私は着席し、そのまま意識を手放そうとしていた。
あぁ…布団が恋しい。
完全に眠りに落ちた頃、身体を軽く揺すられる。
一体何だろう…まだ眠いのに…。
今のは気のせいだった事にして、顔を反対側に向ける。
誰か私の名前を呼んでいる気がする。
今度は更に強く揺すられる。
もう…何なの。
薄く目を開けるとすぐ其処に、了の顔があった。
「おはよう。」
これは夢だ。
だって了は昔転校してしまったじゃないか。
私を置いて。
そうだ。
皆私を置いて何処かに行ってしまう。
目を閉じる。
不意に流れる記憶。
夏休み。
最後に会ったのは何時だったっけ。
何時もみたいに図書館で二人。
夕日射す道を。
またねって言って。
またねって言ったのに。
それっきり。
誰に聞いても返ってくるのは「知らない」ばかり。
だから彼が此処に居る筈無い。
了もまた、私を置いて遠くに行ってしまった人だから。
急に哀しくなる。
そうだ。
私にはもう『私』しか居ないんだ。
顔を温かい感覚が伝った。
「!!」
強い衝撃と共に現実に引き戻される。
何だ。何が起こった?
身体を起こし違和感を感じる腕を見る。
其処には他の誰でもない、私の腕を掴んでいる了が居た。
「あ…あれ?何?え…?」
現状が把握出来ない。
これは?何故彼が此処に?
頭が痛い。
「…大丈夫?」
「う…うん…。」
「急に泣き出すからびっくりしたよ…。何かあったのかい?」
「いや、了は居なくなったのに、目を開けたら其処に居て、だから夢で…?」
「えぇ?」
「あの、だから!えっと、その…?…」
そうだ。転校したのは、私もじゃないか。
私は漸く覚醒した。
「うわぁあっ!?」
「な、何!?」
「…。………やぁ。おはよう貘良君。良い朝だね。」
私は如何したら良いのか解らず…取り敢えず間抜けな事しか言えない。
多分、今私の眉間には力一杯皺が寄っている筈だ。
何か…とてつも無く、恥ずかしい事をしたのではないだろうか。私は。
夢と現がごちゃ混ぜになってよく思い出せない。
思い出そうとすればする程、掴もうとしたそれは霧散する。
軽い頭痛を覚えて目頭に指を当てると濡れていた。
あれ…私、何時の間に。
凄く哀しかった気がするんだけど…何だったっけ。
「本当に大丈夫?何か受信してたみたいだけど…。」
「私は電波塔でもアンテナでもないよ了…凄く眠いの…。」
「えぇ…?寝てないの?」
私が肯定の意思を表そうとすると、教室後方のドアから賑やかな声が入ってくる。
「いよーっす!」
「あぁ、おはようみんなぁ!」
私は濡れた目を擦りながら入室して来た人物を確認する。
城之内君。本田君。真崎さん。そして武藤君。
皆口々に「おはよう」と言って回る。
「おはよー…。」
先程よりはましになっていたものの、
それでもやはりまだ眠たい私の声は自分が思っていたものよりも想像以上に弱弱しい。
正直言って格好悪い。
「あれ…さん…泣いてるの?」
「何ィ!?如何した、なんかあったのか!?」
「え!?い、いや、何も!?」
私は胸の前でひらひらと手を振り否定する。
城之内君の凄みに一瞬驚いたが…本当に何も無いのでこう言うしか無い。
私は指で目を擦り本当に何でも無いと繰り返す。
「なんだぁ〜?獏良に何か言われたのかぁ?」
「えぇー酷いよ本田君、ボクそんな事しないよぉ。」
からかう様に本田君が言うと少し場の空気が和らぐ。
本当に困った様子の了が、何だか少しおかしい。
「違うの。昨日全然寝てなくて…凄い眠いの。」
「なぁんだ。ただの寝不足かよぉ。何かあったんじゃないかって心配しちゃったぜ!」
「でもそんなに酷いなんて…何かあったの?」
武藤君が困った顔で問う。
ちょっとだけ可愛い等と思ってしまう。
何か…こう、モクバの可愛さに通じるものがある。
そうだ…この眠気の元凶。その兄。
「全部瀬人が悪いのよ…だって全然寝かせてくれないんだもん…。」
「な゙ぁ!?」「げぇ!?」
「…え?何?」
城之内君と本田君の…見事な不協シンクロ。
武藤君は二人程リアクションは大きくないが…何故か真っ赤だ。
「え?何?如何したの?」
「ちゃん…それって…まさか…?」
「うん…瀬人ったらデュエルの事になると人格変わるのね…知らなかった。」
「は…?でゅ…える?」
何故だろう。城之内君は物凄く気の抜けた顔をしていた。
そう。まるで別人の様になった瀬人に、私は一晩中扱かれた。
それはもう。厳しいなんてもんじゃない。
思い出しただけでげんなりする。
「もー…凄かったんだから…。お前は何故そんなに物覚えが悪いんだーとか言われてさぁー…。」
「結局寝たの五時とか六時とかだもん…。」
「えぇ!?じゃあさん、本当に徹夜で海馬君に教えてもらってたの!?」
「…続きはまた明日でも良いって言ったんだけどね。時間ぎりっぎりまでテンション高過ぎだし、瀬人…。」
皆一様にげんなりした顔をして並んで居る。
その顔には『想像に容易い』と書いてある。
そっか…皆の前では何時もあんな感じなのかなぁ…。
普段は優しいのにな。瀬人は勿体無いなと思う。
おどけた明るい調子で城之内君が喋り出す。
「なぁんだ!そうだったのか、オレはてっきりちゃんと海馬が夜通しやttっyg!?」
「馬鹿な事言ってないでよ!もう、朝っぱらから!!」
「…朝だからじゃねーのか?」
「バカッ!!」
だが折角喋り始めたのに真崎さんの鞄が後頭部に炸裂し、最後は何を言い掛けたのか聞き取れない。
眠気の妨害によって何時もより更に鈍くさい私の脳はそれでもそれなりに回転を始める。
そして漸く気が付いた。
もっと早く気が付いても良さそうだが…眠気の魔力とは凄まじい。
「な゙ぁ!?えぇ!?ち、違う、違うよそんなんじゃないよ!!そんな瀬人と、無理だよ!?」
「無理とか言ったら海馬君可哀想だよ。」
声の方を振り返ると、本当に心底同情した様な、哀れむ様な顔の了が居た。
だってそんな事言われましても…私と、瀬人が?一緒に?
有り得ない。
いや、健全な高校生としてあっちゃいけない。あ、いや?健全だからあるのか?
もう解んない!!
私の頭の中は大混乱。
皆は大声で笑ってるけど…今度は私が独りで赤くなる番だった。
空気を良く読むこの学校の予鈴は、タイミング良く始業時間を告げた。
小走りで解散すると程無くして先生が入ってくる。
あんなにも酷かった眠気だが…今の一瞬で吹き飛んだ。
海馬邸に越して一ヶ月。一度もそんな風に考えた事無かった。
いや、やっぱり考えられない。
でも…もしそうだったら。
瀬人と、モクバと、私と。本当の家族になれるのかな…。
私は少しだけ真剣に考えてみる。
考えてみるが…何度考え直しても、今と同じ状況にしかならない。
ならこれで良いじゃないか。
出来た兄サマと、可愛い弟と、私で。
これ以上、何を望むと言うのだ。
授業は半分くらいしか入って来なかった。
いや、耳には届いていたのだけれど、其の高揚の無い一定のリズムは、もはや心地の良いBGMでしか無い。
適当にノートを取っている内に授業は終了した。
程無くして武藤君がやって来る。
目をキラキラさせながら嬉しそうに話し出す。
「さん、海馬君にデュエルの特訓して貰ったって言ってたけど、それ本当?」
「本当も本当だよ…。でももうお腹一杯…。」
私は昨晩の瀬人をもう一度思い出す。
厳しい目付きと言動。
加虐的且つ高圧な態度。
背筋に寒いものが走る。
「はは…大変だったみたいだね…。」
複雑な表情の武藤君の言葉に、私は力無く頷く事しか出来ない。
「でもさ!あの海馬君が先生なら、さんかなり上達したんじゃないかな!?」
「…どうかな…まだ解んない。当たり前だけど…一回も勝てなかったし…。」
「聞いてよ武藤君…瀬人ったら酷いの。何だっけ…青眼の究極竜だっけ…?四回も召喚したのよ?あんなの勝てる訳ないじゃない。」
「…げぇ…なんてゆーか…海馬君だね…。」
「融合とか…ちょっとトラウマだよねぇ…あんなのばかすか召喚されたら…。何かずるい。」
「あとロード・オブ・ドラゴンも。おかしいよ…おかしいって、1ターンで死んじゃうって。」
がっくりと机に突っ伏し辛酸を嘗めていた私達の所に皆徐々に集まる。
「んぁ〜?海馬が如何したって?ん?なんだぁちゃん、まだ眠いのかぁ?」
「…今、私は絶望の淵に立っているんです…。」
「は、はぁ?」
「昨日相当海馬君に絞られたみたいなんだ。」
「ええ。それはもうボロ雑巾の様に…。」
「ボロ雑巾…。」
ごくりと喉を鳴らす城之内君の顔が引き攣る。
彼等の前での瀬人はやはり、昨晩の彼なのか。
なら…何と無く、皆と仲良く出来ないのは解る気がした。
それに瀬人は、元々あまり他人に心を開かない人だ。
やっぱり瀬人は…勿体無いな。
「ねぇさん、昼休みにボクとデュエルしてみない!?」
「…武藤君と?」
「駄目…かなぁ?」
身体の前で手を間誤付かせながら上目使いで問う彼を前に、否定する事の出来る人など居るのだろうか?
自然と上がる口角。
今日初めて笑った気がする。
「駄目な訳無いよ。やろ?デュエル!」
「本当!?やったぜー!」
「な゛っ!遊戯だけかよ!?」
「そんな事無いよ。私で良ければお相手してもらえるかな?」
「勿論だぜ!!」
歯切れの良い返事。片腕を振り上げ軽く飛び跳ねる。
城之内君は何時も元気だな。
それな彼を見ていると段々、私も楽しくなってくる。
先程迄の身体の怠さも、少し消えた様な気がした。
得てして楽しい時間と言うものは一瞬で過ぎ去る。
チャイムは二時間目の開始をを告げた。
皆先程と同じ様に解散して行く。
去り際に了が振り返り一言、「良かったね。」と微笑む。
私はそれに短く頷き微笑み返した。