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Dream Story
- Les autres me
- 01.【Premonition】 02.【Reunion / Confusion】 03.【Enchante】 04.【Avis】 05.【Pause-temps】 06.【panier-repas】 07.【l'heure du dejeuner】 08.【Apres l'ecole】 09.【Burger World】 10.【Regle】 11.【auto haine】 12.【sermonner】 13.【Maniere】 14.【Dans la Accueil】-Si mon- 15.【Dans la Accueil】-Si Ryou-
- 16.【La privation de sommeil】
- ⇒+ remise +
- ⇒+ aller a TEXTE +
- ⇒+ aller a principal +
壁伝いに黄昏れを駆けて行く。
気持ちばかりが焦る。
早く早く。
じゃないと…怒られる!!
何時迄も続く長い壁に、もしかしたら終わりなんて無いのでは無いだろうかと思い始めた頃、
やっとの思いで塀の切れ目、身長の倍はあろうかという鉄の柵の前に立つ。
その隣に申し訳無さ気に付いているインターホンを押そうとするが、柵は独りでに勝手に開いた。
…あ…あれ?何これ自動ドア?
『お帰りなさいませ、様。どうぞお入り下さい。』
「どうも…。」
そっか…磯野さんか…。
実質的に海馬邸の全てを任されている瀬人の補佐役。
でもまさか…ずっと柵と睨めっこしていた訳では…無いよね?
彼もまた瀬人同様、忙しい人なのだ。
丁寧に手入れの行き届いた広い広い庭を抜ける。
初めて此処に来た時は本当に驚いた。
これが個人の家だとは今でも俄かに信じ難い。
漸く玄関先まで辿り着く。大きな家と言うのも少し考え物だと思った。
特に…急いでいる時なんかは…。
私は恐る恐るドアに手を掛ける。
開けた瞬間。仁王立ちの瀬人が居るかもしれない恐怖と戦いながら。
だがしかし、私が開ける前に扉は開いた。
「お帰りなさいませ。奥で瀬人様がお待ちですよ。」
「磯野さんか…び、びっくりしたぁ…。」
「は…?」
「怒った瀬人が、帰りが遅いーって出て来たのかと思った。」
「それはそれは…申し訳御座居ません。」
「ですが…それでしたら早く瀬人様の所に向かわれた方が宜しいでしょう。」
「そ…そうだね…ははっ。」
「此方です。」
困った様に笑う磯野さんに促され中に進む。
広過ぎるエントランスと長い長い廊下を抜け、私は漸く瀬人の部屋へ辿り着く。
軽いデジャヴ。
私は又しても扉の前で一瞬動きが止まる。中に居るのであろう彼の事を考えて。
小さく深呼吸してドアノブに手を掛ける。
此処で何時までもこうしていたのでは埒が明かない。
意を決して扉を開けると其処には仁王立ちではなく、大きな一人掛けのソファーにゆったりと座った瀬人が居た。
横に置かれたコーヒーテーブルには何だがごっつい書類やらファイルやらが積まれ、
膝の上のノートパソコンに何か打ち続けている。
「ただいまぁ…。」
「…遅い。」
「ごめんね…楽しくて、つい…あはは…。」
「ふぅん。…まぁ良い。」
やっと手元から視線を上げた瀬人は…不機嫌ではなさそうだった。
背後から何やらばたばたと騒々しい音が物凄い早さで近付いて来る。
そして、更に大きな音と共に、今さっき私が入ってきた扉が開く。
「やっと帰って来たな!!遅いぜ!!!」
「モクバ!!」
「お帰り!!」
小さな身体が飛び込んで来る。
私は少し両腕を広げてモクバを受け取める。
「ただいま。遅くなっちゃってごめんね?」
「もう待ちくたびれちゃったぜ。」
猫の様な大きな目でむすっと膨れるモクバが可愛くて仕方無い。
やっぱりこの子も全然変わらない。
私の大切な人達。
「ごめんごめん。クラスの子達と一緒に遊んできたら遅くなっちゃった。」
「クラスの子?まさか遊戯達じゃないよなぁ!」
遊戯?何故モクバが武藤君の事を?
おどけた調子で面白そうに言うモクバが私は不思議で仕様が無い。
「え?モクバ…武藤君の事知ってるの?」
「…まさか…本当に遊戯達と?」
「?うん。」
「に…兄サマ!!」
「えぇ!?な、何!?」
「騒ぐな。知っている。」
モクバのこの動揺振りは…何だろう。
それよりも何故モクバが武藤君の事を知っているのだろう。
だが私の思考は磯野さんの登場によって遮られる。
慇懃にドアを開け告げる。
「夕食の用意が整いました。」
「行くぞ。」
手際良く紙片を纏め立ち上がり、必然と此方に近付いて来た瀬人が私達の前で止まる。
私達がドアを塞いでしまっているのだ。これでは出るに出られない。
並んで立つ形になった瀬人は、見上げなければもう顔を見る事も出来ない。
「…?何だ。」
「いや…本当に大きくなったなぁーって。」
「馬鹿な事を言うな。あれから何年経ったと思っている。」
「モクバも大きくなったよね。」
「あったりまえだぜぇ!!」
やっぱり可愛い。
無邪気に笑うモクバの頭を撫でると子供扱いするなと嫌がったけれど、私は構わずに続ける。
止めてと言いながら振り払おうと手をぱたぱたと振っていたが、
私に止める意思が無いと解ると照れた様に少し俯き、大人しく文句を言うのみになった。
「だがそれはオレ達だけではない。お前もだ。。」
声の主の方を振り向くと、柔らく口角を上げた瀬人が居た。
私も同じ様に微笑み返す。
急に静かになった腕の中のモクバはきょとんとした顔をしていた。
…何だろう?
私が声を掛けようとした矢先、瀬人もモクバに気付いた様だ。
「如何した?」
「い、いや!何でも無いぜ!?それより早く行かないと冷めちゃうぜ?」
「お前達が騒いでいなければ今頃は食卓に着いていた筈だがな。」
「えぇ何それ酷い!」
「行くぞ。」
「あっ、待ってよ兄サマ!!」
「えぇ!?ちょ、ちょっと置いて行かないでよ!!」
私達はやはりばたばたと瀬人の後を追う。
この家は本当に広い。
ただ食事をするだけなのに専用の大部屋があると言うのは中々に…有り得ない事だと思う。
先月まで私が居た様な家ではそれも普通の事なのだと思うが…そもそもの規模も様相も違う。
何も無いのだ。テーブルと椅子以外。
しかも其れが馬鹿みたいに長い長いデーブル。
幾つもの大窓からは沢山の日が差すが…誰も居ないこの部屋では逆に其れが虚しい。
だから私は正直この部屋が好きでは無い。
この部屋で独りきりで摂る食事は…とても味気無い。
瀬人もモクバも忙しい。家に居る事すら珍しい。
必然的に私はこの家に着てから今迄独りで食事を摂る事が多かった訳だが、
独りきりでこの部屋で食事をしたのは数回で、基本的には自室で済ませている。
瀬人とモクバは、二人きりで寂しくなかったのだろうか?
いや。きっとそれは、愚問なのだろうけど。
ダイニングルームには既にきちんと食器が配膳され、私達の到着を今や遅しと並んでいた。
小走りで駆け寄るモクバに私と瀬人も続く。
ひょいっと飛び乗る様に着席するモクバを見て、やっぱり猫みたいな子だと思った。
三人共着席すると給仕さん達が次々と料理を装ってくれる。
此処は…本当に日本なのだろうか。
まるで映画か何かの様だ。
私はまだちょっと慣れないでいる。
「それにしても、本当に遊戯と一緒に居たのか?」
さっきの話の続きなのだろう。
モクバのあの動揺は何だったのだろうか。
今も少し困った様な…そんな感じで切り出される。
やはり気になる。
「うん。武藤君だけじゃなかったけどね。みんな優しくて良い人だったよ。」
今のままでは私には情報が少な過ぎる。
正直に素直に思った事を述べる以外無い。
相変わらずモクバは困った顔のまま私と瀬人を見比べたりしている。
瀬人は特に興味も無さそうにしている。
「モクバは武藤君の事、何で知ってるの?」
「遊戯は兄サマの宿敵なんだ。」
「しゅ…宿敵?」
いきなりなんだか物騒な単語が出てきたが…取り敢えずその一言で仲が良くないと言う事は解った。
だが如何せんその一言だけでは全体を把握し切れない。
だけどさっきから申し訳無さそうにしているモクバにこれ以上聞くのは少し可哀想な気がする。
なら私が質問をする相手は−一人しか居ない。
「宿敵って…何なの?瀬人。」
「ふぅん。遊戯はこの俺が倒す。ただ其れだけの事だ。」
だから一体何の事だ!?
まさかあの武藤君と殴り合いの喧嘩でもするのだろうか。
私は瀬人と武藤君が取っ組み合っている所を想像してみたけど…一瞬で瀬人が捩じ伏せる所しか思い浮かばない。
これではただの虐めっ子である。
武藤君の雰囲気や身長差を考えれば勿論の事なのだろうが、私は瀬人が喧嘩も強い事を知っている。
どんなに体格の違う子にもモクバと私の為なら果敢に立ち向かってくれた。
そんな事を考えていた私の脳裏に一つの単語が過ぎる。
「あ…デュエル…モンスターズ?」
「知ってるの?」
「うん!今日武藤君に教えてもらったんだ。少しだけどカードも買ったんだよ。」
「瀬人凄く強いんだってね。全国大会で優勝したって聞いたよ。」
「…ふん。」
あ…あれ?何だろう。何故だか瀬人は少し険しい顔になる。
私はこのままこの話題を続けるかどうか迷う。
だけどここで中断するのも何か変だ。
当たり障り無い様、同じ話題で少し方向を変える事にする。
武藤君と瀬人の事に関して触れない様にするには自分の話をするしか今の私には無い。
「明日ね、また学校でデュエルする約束したんだ。」
すると瀬人は少し驚いた表情で顔を此方に向ける。
あ…あれ?軌道修正失敗?
「お前…ルールを解っているのか!?」
何もそんな驚愕みたいな表情で聞かなくても良いのではないかと私は居た堪れない気持ちになる。
だが正直なところ、私はまだ完全には把握していないと思う。
もし完璧なデッキがあったとしても一瞬で負けてしまうのだろう。
「知っては…いるよ?理解してるかどうかは怪しいけど。」
「どうせそんな事だろうとは思ったがな。」
腕を組みながらそう言い放たれた私はぐうの音も出ない。
くっそー…。悔しい。
悔しいが…反論出来ない。
私の正面に座るモクバは何だかおかしそうに笑いを堪えている。
モ、モクバまで…そんなに小馬鹿にしなくても良いじゃないか。
「兄サマ、に教えてあげたら?」
「!そうだよ!!瀬人強いんでしょ!?教えてよ!」
「お前には無理だ。」
モクバの提案をぴしゃりと跳ね除ける瀬人に私は喰い付く。
「そ、そんな事ないよ!昔よりちゃんと覚えられるってきっと!!」
「…覚えて…いたのか?」
「ルールは…覚えてないどね…あはは。」
相変わらず腕を組み嘲笑的な笑いを浮かべていた瀬人は、私の言葉に目を見開く。
まぁ…私も今日まで忘れていた訳ですが。
其れとは反対に、瀬人が覚えて居たのはちょっと意外だ。
瀬人が教えてくれたのはデュエルモンスターズだけじゃない。
トランプ一つ取っても幾つもの遊び方を教えてくれた。
他にもボードゲームや…そうだ。チェスを教えてくれたのも瀬人だ。
瀬人は本当に何でも知っていた。
一瞬何か考えていた様だったが直ぐに口を開く。
「良いだろう。教えてやる。」
「本当!?わぁ、ありがとう!!」
「だがしかし弱音を吐く事は許さんぞ!」
「え…弱音ってそんな…。」
「頑張れよ。兄サマは怖いぜ〜?」
な…何だろう瀬人がちょっと怖い。モクバはにやっと笑ってるし…。
幸先不安だ…。
食事が済むと早速レクチャーしてくれるとの事だった。
瀬人は私が買ったカードを見せろと言うので瀬人の部屋に帰って来た時のまま置きっ放しにしてある鞄を取りに行く事にし、
そのまま三人で瀬人の部屋で教えて貰う事にする。
部屋に入り鞄を手にした時、ふと視界にコーヒーテーブルが入る。
その上には山積みの書類。
「瀬人…あれ、良いの?」
指を指しながら問うと短く「構わん。」と返ってくる。本当だろうか。
「それより早く見せてみろ。」
言われて私は鞄の中からカードの束を取り出し手渡す。
あぁ。でも城之内君が言っていた。
「でもね、このままじゃデッキとして使えないよ?」
「ふぅん…。…その様だな。モクバ。」
私が手渡したカードを繰りながら瀬人がモクバを呼ぶと、
少し遅れて入って来ていたモクバが何処から持って来たのかその手に握られていた大きなジュラルミンケースを瀬人に渡す。
一体何が入っているのかと思って瀬人の後ろから中を覗き込むと、其処には目一杯に詰められたカードの山。
「…うわぁ。」
そのあまりの量の多さに思わず変な声が出る。
あの薄いカードがこの中にこれだけみっしりと詰まっているとなると…
もう私にはこの中に何枚くらい入っているのか予想も出来ない。
モクバが持って来たジュラルミンケースは決して小さい物では無い。
其れこそモクバの半分くらいはある、比較的大きな物だ。
「何だ。変な声を出すな。」
「だって…すっごいよ。これ。量。これで殴られたら死ぬよ。きっと。」
私の発言は華麗に流され、瀬人は黙々と手札を捲っていた瀬人の手がふと止まり表情が険しくなる。
一体何だろうと手元を覗き込むと、瀬人はブラック・マジシャンのカードで手が止まっている。
一緒に覗き込んでいたモクバも短く「げっ」と唸る。
「あ、私ね、このカードデッキに入れたいの!!」
「な、なんだと!?」
「えーとね…あと…これと、これ!」
瀬人の手元を覗き込み、混沌の黒魔術師と光と闇の洗礼を抜き取る。
苦虫を噛み潰してた様な顔をしていた瀬人は、それを見ると表情を少し変える。
「ふぅん…混沌の黒魔術師か…。」
そう一言だけ言うと瀬人は黙々とカードを足したり引いたりし始める。
あ…あの…そんなごっすんごっすん入れ替えなくても…と言うか…殆ど抜いてませんか?瀬人。
帰って来た時に腰掛けていたソファに少し前のめりになる様に両足に肘を乗せながら座っている瀬人は
物凄い勢いでデッキを作っていく。
手元からカードを抜いてはコーヒーテーブルの上に投げ出し、ジュラルミンケースの中から何かを取り出して加える。
カードには其々その効果や使用法が書かれているのだが、瀬人はそんなものは一々確認しない。
確認どころか見てすらも居ない様だが…覚えていると言う事なのだろうか?
この量を?
隣でおろおろと様子を見ている事しか出来なかったが、程無くしてそれも終わった。
「これを使え。」
「うん…。」
手渡された手札の束を次々と繰ってみるが…。
「また見た事ないのばっかり…!」
私はがっくりと肩を落とすしかない。
しかし、見た事があるカードでも結局如何使って良いのか解らない物ばかりなので現状は一進も一退もしていないのだが…。
「安心しろ。これから使い方を叩き込んでやる。」
何だろう。今、凄く、瀬人が怖い。一体何なのそのサディスティックな笑いと迫力は。
少し離れた所で、反対にした椅子の背もたれの上に腕を組んで寄り掛かって居たモクバが欠伸をしていた。