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Dream Story
- ばくらけ
- 【寒い朝は】 【雨とあいつ】 【根競べ】 【眠り姫vs日曜日よりの使者】
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「ねぇバクラ。」
そう零した後、私は後悔した。
何か言いたい事がある訳じゃない。
何か聞きたい事がある訳じゃない。
だからと言ってただ呼び掛けたかった訳でもない。
詰まらなさそうに本の頁を繰っていた彼は気怠そうに視線を寄越す。
テーブルに片肘を乗せ傾いたまま短く「何だ。」と返し
視線をまたすぐに手元に戻してしまうバクラに少しだけ苛つく。
決して顔は向けない。
高慢な男だと思う。
この人は何時もそうだ。
上から見下すか、下から睨み付けるか。
そのどちらかしか無いのか。
はたと思考が途切れる。
私は何故彼の名を呼んだんだっけ。
注意を引きたかった訳ではない。
ならば何がしたかったのだろう。
判らない。
流れる沈黙。澱む空気。彼から無言の威圧。
何時まで経っても口を開かない私に、バクラも視線だけで語り掛ける。
視線は下から。
『何だと聞いている。』と言った。
私は表情を変える事無く、ただそれを受け続ける。
頬杖をついた私の口は何かを発しようと中途半端に開いてみたが、やがてまた閉じた。
段々と不機嫌になっていくのが手に取る様に判る。
眉間に皺が寄り、目を細めたバクラは愈々耐え切れずもう一度問う。
「一体何だ。」
強く、短く。
だけどその中に僅かの疲労感。
昔から根競べには驚く程弱い。
そのくせ焦らしたがったりもする。
ただ自分が優位に立ちたいだけなのか。
いや、違う。
子供なのだ。彼は。
「いい加減にしとけよ。。」
再び思考が止まる。
今にも噛み付かれそうだ。
でも恐い訳では無い。
一見しただけでは判らない、恐らく、私にしか解らない疲弊が混じっていたから。
それがおかしくて、何だか嬉しくて、顔が綻ぶ。
流石に気を悪くしたバクラが堪え切れず身を乗り出した時、
漸く私は言葉を紡ぐ。
「私、バクラの事好きだよ。」
首と背筋を伸ばして軽く頭を横に倒したバクラは鳩が豆鉄砲喰らった様な風体のまま「あぁん?」と唸った。
何時も釣り上がった眉根は困った様に下がり大きく見開いた目の鳶色の光彩は小さい。
そうか。
正面からはこうやって見てくるのか。
可愛くて、だらし無い。
自分がにやけているのは解っているのだが、止められない。
「それが如何した。今更何だってんだ?」
「何でも無い。ただそう思っただけ。」
「…なら笑ってんじゃねぇよ。」
折角此方を向いたのに、また直ぐに俯いてしまう。
でも彼は何を見ているんだろうか。
再び手に取った小さな本は逆さまだ。
「ねぇバクラ。」
「…今度は何だ。」
「そろそろお茶の時間かしらね?」
「…解ったよ。」
面倒臭そうに緩慢に立ち上がったバクラが次にリビングに戻って来た時、
その手に握られたトレーの上に几帳面に乗せられたサンドウィッチとシュークリームと、
それに丁寧に淹れられた紅茶に、私は大変満足した。
「別にそう言うつもりじゃ無かったのに。」
「…とっとと食いやがれ。」
「バクラ照れてるの?」
「違ぇよ!!んな訳あるか!!!」
「…さっきから何読んでるの?」
「何だって良いだろ。」
「そうだよね。本、逆さまだもんね。」
「…!」
「バクラかーわいい。」
「笑わせんじゃねぇよ!!!」
「ぎゃあっ!!ちょ、危ない零れる!!落ちる!!!落ち着けバクラ!!」
「うるせぇ!!オレに命令すんじゃねぇ!!!!」
「ぎゃああぁーっ!!!」